アルツハイマー型認知症を引き起こす原因は脳の炎症?
当ブログでは、20代・30代・40代から(若年性)認知症を予防するにはどうすれば良いのかを、食事の話題、特にサラダ油をやめることと、腸内フローラの改善を中心にして書き綴ってきました。
このたび、この記事で考えてみたいのは、アルツハイマー型認知症と「脳の炎症」の問題です。
この脳の炎症とアルツハイマー病、さらに日々の食事の問題に気づき、その関連性について言及しているのは、神経科医のデイヴィッド・パールマター氏です。
デイヴィッド・パールマター氏は『「いつものパン」があなたを殺す』のなかで脳と炎症について以下のように述べています。
私は、がんを治療したり、言い表わせない痛みを抑え、肥満をただちに克服させ、アルツハイマー病のせいでダメージを受けてきた脳を元に戻したりするための処方箋は書けない。
症状を一時的に軽減するといった対処はできる。しかし、その根本的な原因を治すことと、単に症状を食い止めることとの間には大きな差がある。
そうした病気の多くは、手に負える状態ではなくなった「炎症反応」に端を発している。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p42)
脳疾患の原因は多くの症例において、たいがいは食事だ。脳の不具合の発生と進行にはいくつかの因子がかかわっているものの、だいたいの場合、炭水化物を食べすぎたとか、健康的な脂肪をほとんど口にしなかったという過ちのせいだ。
この事実を理解するには、あらゆる神経系の病気の中でもっとも恐るべきもの、つまりアルツハイマー病を考えることだ。そしてアルツハイマー病を、食事だけが引き金となる糖尿病の一種という視点で見てみることだ。質の悪い食事をとっている肥満や糖尿病になり得ることは誰もがわかっている。果たして脳も同じように壊れてしまうのか。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p43)
また特に「炎症」に関しては、以下のように述べています。
脳疾患も含めてすべての変性疾患を引き起こすのが「炎症」であることは、研究者たちにはかなり前から知られていた。そして研究者たちは、グルテン、さらに言えば高炭水化物の食事が脳に達する炎症反応の原因になっていることを見出しつつある。
ふだん、腸内ガス、膨満感、便秘、そして下痢などは比較的すぐに症状が現れるので、消化器系疾患や食物アレルギーには気づきやすい。ところが、脳はとくにわかりにくい器官だということだ。分子レベルではあなたが気づかないうちにずっと激しい攻撃に耐えているかもしれない。頭痛を治そうとしたり、明らかな神経系の問題に対処したりしないかぎり、脳で何が起こっているかはわからず、とうとう手遅れということになり得る。脳疾患に関して言えば、いったん認知症などの診断が下されると、そこからの方向転換は難しいのだ。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p53)
炎症とはそもそも比較的短い日数で治るものだ。長い時間にわたって続くものではないし、ましていつまでも続くものは決してない。ところが、この続くはずのないものが、いまや何百万人もの人たちにおいては続いているのである。もしも体が常に刺激物にさらされて絶えず攻撃を受けていたら炎症反応も続いたままだ。しかも血流を介して体のあらゆる部分に広がってしまう。その結果、私たちは血液検査を通じてこの種の広範囲におよぶ炎症を見出せるというわけだ。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p60)
炎症が本来の目的から逸脱すると、さまざまな化学物質がつくられ、それらが細胞にとっては直接的に有毒になる。これによって、細胞の機能が低下し、やがて細胞は破壊される。抑えのきかない炎症は、冠状動脈疾患(心臓発作)、がん、糖尿病、アルツハイマー病、それに実質上、思い浮かぶかぎりすべての慢性疾患に伴う病的な状態、あるいは死の根本的原因であることがわかっている。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p60)
アルツハイマー型認知症の予防には脳の炎症を防ぐための食事が大切
デイビッド・パールマター氏は脳と炎症に関してこのように言及していますが、この引用文を読んで悲観的になる必要はなく、食事に対する認識を変えることが何よりも重要だとも述べています。
そのため、アルツハイマー型認知症予防のためには、これからは、脳の炎症を防ぐような食事の摂り方が非常に大切になってくると考えられるのです。
ちなみに、デイビッド・パールマター氏の『「いつものパン」があなたを殺す』は、「グルテン過敏症」の問題を主に取り上げ、タンパク質の一種であり、パンをふっくらさせるのに使われるグルテンの、からだや脳に対する悪影響について述べています。
また糖質(主にグラニュー糖や異性化糖)の摂りすぎについても問題視しています。
一方、脳の炎症を抑える働きがあるのは、DHAをはじめとしたオメガ3脂肪酸だとされています。
人間の脳はその重さの三分の二以上が脂肪であり、そのうちの四分の一がDHAである。そしてこのDHAは抗炎症作用を持っていて、体に負担がかかるような食事をとると、体を守るために戦士のように戦ってくれる。たとえば、グルテンに反応して起こる腸の炎症を抑えたり、糖質(とくにはちみつや果物に含まれる果糖)たっぷりの食事による悪影響を防いだり。さらに、炭水化物を摂りすぎて脳の代謝が低下するのを防いだりする。(デイビッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ『「いつものパン」があなたを殺す』 p252~253)
魚の油は、脳血管や脳細胞で炎症を抑制することでも、脳を強力にガードしてくれている。専門家のあいだでは、炎症は脳の組織や機能の破壊の原因になり、脳卒中やアルツハイマー病を進行させるという認識が高まっている。炎症を誘発して血管にダメージを与えたり細胞間の情報伝達を妨害するホルモン様物質であるプロスタグランジン、ロイコトリエン、サイトカインの生成を、オメガ3は抑えてくれる。オメガ6を多く含んだ油(コーン・オイル、紅花油、ひまわり油、大豆油など)を摂る量が多いほど、オメガ3の摂取量も増やさないと、炎症を抑えにくくなってしまう。(ジーン・カーパー『奇跡の脳をつくる食事とサプリメント』丸本淑生訳 p104~105)
このように、オメガ3脂肪酸(DHA・EPA・α‐リノレン酸)は、脳の炎症を抑えるのに有効だとされています。
そのため、日頃の食生活において、DHAやEPAが不足しないように心がけることは、脳の炎症を抑えるためには大切だと考えられるのです。
ところでデイビッド・パールマター氏の『「いつものパン」があなたを殺す』はベストセラーになり、「糖質制限ダイエット」ブームに拍車をかけたり、「グルテンフリー」という言葉が流行るきっかけになったりした本だという印象を受けます。
しかし、ただのブームで終わらせるのではなく、若いうちからアルツハイマー型認知症を防ぐ方法を考えていくうえで、脳の炎症の怖ろしさについてなど、様々な示唆を与えてくれる一冊であるように思われます。
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